はじめに ~大阪New ARTクリニックの治療方針~
体外受精・胚移植について
はじめに ~大阪New ARTクリニックの治療方針~
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1. 初めて体外受精を受ける方へ
“体外受精”おそらく多くの皆様方がこの言葉を聞かれたことがあると思いますが、実際に体外受精胚移植法を行うとなれば、多少なりともためらいや戸惑いをお持ちのことと思います。大阪New ARTクリニックは、皆様方に、正確な知識と治療方針を理解していただき、納得のいく治療を受けていただきたいと思っています。
体外受精胚移植法が世界で初めて成功してから38年が過ぎました。この間、不妊治療技術、特に生殖補助医療の進歩は目覚しく、不可能と考えられていたことも容易に行えるようになり、日本だけでも体外受精で生まれた子供の数は38万人を超え(2015年)、今では誕生した赤ちゃん27人に1人は体外受精によって妊娠して生まれた赤ちゃんです。このように体外受精胚移植法は現在、不妊治療としてすでに定着している治療法なのです。
また、体外受精法は妊娠率が高いだけでなく、採卵をして卵を観察し、受精・成長の確認を行いますので、通常の不妊症検査で判らなかった卵の質・精子の受精能力や受精卵の質が判りますので、不妊原因がはっきりとするメリットもあります。
しかし、一口に体外受精といっても近年目覚しく急激に体外受精が発展しているため、様々な排卵誘発方法や体外培養方法・技術(顕微授精法・胚盤胞移植法・透明帯開口法・胚凍結法)があり、これらは全て今現在でも現在進行形に発達します。この中から、それぞれの方に合った最適で最先端の治療法を診断しなければ、高い妊娠率は維持する事ができません。この事から、治療技術や成績が施設によって大きな差が生じている事も事実です。大阪New ARTクリニックは、体外受精38年の歴史と現在の不妊治療の最先端技術を融合させ、様々なデータ、角度から個々の方々に合う質の高い治療を考え、限られた時間を最大限に利用し、回り道せずに行える治療を提供しています。
何度も同じ治療を繰り返すのではなく、的確な診断に基づき、個々の方々に合った治療を行えば、3回以内に70%の方が妊娠されます(累積妊娠率)。残念ながら3回以内に妊娠されない難しい方もおられます。しかし、さらに慎重にその方々にあった治療方法を考え、体外受精胚移植を続けていただくと、その後の体外受精で約15%の方が妊娠されます。このことから、私たち大阪New ARTクリニックは、まずは3回の体外受精の間に、何とか妊娠していただけるよう、最善を尽くす方針です。
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2. 他院で体外受精を受けてもなかなか妊娠しない方へ
“体外受精”を行ったのに、妊娠しないため戸惑いと苛立ちをお持ちだと思います。“体外受精”はまだ38年間・顕微授精はまだ24年間の歴史しかありませんが、その間の進歩は目覚しく、不可能が可能になる時代になってきました。しかし、進歩が早いために、最先端の世界スタンダードの治療をすべての医療機関が行っているわけではありません。進歩についてこられない医療機関も存在するのも事実です。そのため“体外受精”という言葉が同じでも中身が違う事があります。最先端でその方にあった“Tailor-made”の“体外受精”を行えば妊娠する可能性が十分あります。
しかし、最先端の“体外受精”をもってしてもすべての不可能が可能になるわけではありません。まだまだ体外受精は発展途上です。今後ますます改善され進歩していくと考えられますが、今現在においてすべての方が妊娠できるわけではありません。ただ“体外受精”を行い、通常の不妊症検査で判らなかった卵の質・精子の受精能力や受精卵の質など不妊原因がはっきりすることにより、妊娠しない理由・今後の見通しが明らかになり、様々な判断を下す事が可能になります。大阪New ARTクリニックは、様々なデータ、角度から個々の方々に合う質の高い治療を考え、“体外受精”が発展していく中で、Ready-made(既製の方法)・Order-made(患者希望の方法)ではない、Tailor-made(専門家が考えた患者にあった方法)による体外受精を行っています。詳細に関しては個々の方により異なります。パンフレットにすべて掲載する事は不可能ですので直接主治医から説明を受けてください。
本当に最先端の“体外受精”を行い、妊娠可能かどうか判断してください。限られた時間を最大限に利用し、回り道せず納得のいく治療を提供することを心がけています。
皆様にとって大阪New ARTクリニックが終着駅になりますよう最善を尽くす方針です。
体外受精・胚移植について
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1. 体外受精・胚移植とは
卵巣より直接成熟卵を採取し(採卵)、体外で卵と精子を培養液の中で一緒にし(媒精)、その後受精・分割成長した卵(胚)を、子宮内に戻す(胚移植)ことを言います。
体外受精・胚移植の流れ
体外受精は、卵管がつまっている方、手術等で卵管がない方はもちろん、夫の精子の少ない方、何年も不妊治療をしても妊娠しない難治性不妊症の方が対象となり、卵が発育し排卵をしていれば、特に女性の年齢制限はありません。
又、体外受精は採卵をして卵を観察し、受精-成長の確認を行いますので、卵の質・精子の受精能力や受精卵の質が判ります。例えば、良い受精卵を戻し妊娠すれば、それまで妊娠しなかった原因は卵管の問題だったということになります。残念ながら妊娠に至らなければ着床の問題ということになります。こうして体外受精を行う事で今までわからなかった不妊の原因がはっきり判ります。
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2. 体外受精の方法について
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(1)卵巣刺激について
体外受精を成功させるためには、良い卵をたくさん採る必要があります。そのために、点鼻薬Gn-RH Agonist(ナファレリール)と排卵誘発剤の注射をします。点鼻薬は自然排卵を起こさせないために使いますが、使用方法は個人差があります。排卵誘発剤は卵巣を刺激し、たくさんの卵をつくるための注射で、使用量には個人差があります。排卵誘発剤の注射は通常生理開始の3日目から毎日続けます。7~8日目より超音波検査と血液ホルモン検査で卵の発育度を調べていきます。十分に発育したと判断された夜、卵の成熟を促す注射(HCG)をします。夜9時頃になりますが、採卵時刻にあわせて時間を決めますので、時間厳守して下さい。点鼻薬はこの日で中止します。
最近では新しい卵巣刺激方法として点鼻薬を使わない注射Gn-RH Antagonist(セトロタイド)を用いた卵巣刺激方法もひろまりつつあります。このGn-RH Antagonist(セトロタイド・ガニレスト)も2006年9月から日本でも発売され、昨年度は全採卵症例のうち約30%の方々に使用し、好成績をおさめることが出来ました。また、遺伝子組換えヒト卵胞刺激ホルモン製剤も発売され、ようやく日本でも海外から個人的に薬を輸入しなくても世界スタンダードの体外受精を行うことが可能になってきました。
排卵誘発方法は非常に大切で、体外受精の成績に大きく影響します。排卵誘発により多くの良好な卵を採取する事が最も重要で、適時超音波検査を行い卵胞の大きさを測定し採血によりホルモン動態を確認することにより、最も適切な時期に採卵を行う事が可能となります。血液中のホルモン値をタイムリーに判断し排卵誘発方法を変更したり、採卵日を決定する必要があります。そのため採血後1時間から2時間程度お待ちいただくことがあります。
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(2)卵の採取について(採卵)
採卵当日は、朝から何も食べたり飲んだりしないで、AM8:00に来院していただきます。採卵は膣へ局所麻酔をして、超音波診断装置の下で膣より針を刺し、卵巣より排卵直前の卵を採ります。採取された卵は、顕微鏡で成熟度を観察します。採卵の所要時間は約5~10分で、その後1~2時間の安静で帰宅できます。採卵時の痛み、不快感は多少伴うこともありますが個人差があります。手術や癒着のため卵巣が正常な位置にない人の場合、あるいは希望があれば静脈麻酔を行う場合もあります。
採卵時の痛みについて、当院では局所麻酔を行っていますが、痛みに対して不安がある方は遠慮なくスタッフに相談してください。麻酔は必要かつ十分にするのが基本で、不足しても過剰にかけすぎるものでもありません。局所麻酔・静脈麻酔どちらにも長所・短所がありますので、適時判断させていただきます。基本的に痛みを訴えている状態で、無理やり採卵を行う事はありません。
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(3)夫の精液採取について
採卵1週間前より御主人には抗生物質をのんでいただき、精液をきれいな状態にしておきます。
当日朝は、シャワーを使用し、清潔にしてください。ご自宅で採取していただいても結構です。遠方の方や当院で採取を希望される方は採取場所として個室が用意してありますのでAM8:00に奥様と一緒に来院して下さい。奥様の採卵中に精液を採取していただきます。(採卵前は3~7日間の禁欲を目安にしてください。)御主人の仕事の都合など、不都合が想定される場合はスタッフに御相談下さい。
最初の精液状態が悪い場合、午前中に、もう一度採っていただくこともありますので検査結果が出る迄待っていただくか、あるいは連絡がつくようにしておいて下さい。御都合が悪い方はスタッフに事前に御相談ください。
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(4)精子の調整と媒精・培養について
提出していただいた精液は、特別な方法で良い精子を選別調整します。その後、調整した精子と採取した卵を、培養器内で一緒にします。
顕微授精をする場合もこの時に行います。そして再び培養器内に戻します。
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(5)受精の確認について
採卵日の翌日(採卵後24時間)に顕微鏡で確認します。しかし、受精が確認できるのは形態学的に胚が変化する2時間だけしかありません。受精が確認できなくても、卵は正常受精しており正常に胚が分割してくる事があります。そのため、確認できた受精数と実際の分割卵数が異なる事があります。一般的には正常な卵と精子であれば70%以上の卵は受精します。しかし、精子の受精能力が低ければ精子の数が多くても30%未満の場合もめずらしくありません。受精を確認した卵は新しい培養液の中に移し換え、さらに培養します。
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(6)受精卵を子宮内に戻すこと(胚移植)について
採卵後2~3日目に、分割した受精卵は4~8分割卵(胚)となります。この胚を子宮内に戻す日は、採卵後2日目又は3日目になりますが、胚や子宮内膜の状態等を考慮し医師が判断します。
胚移植は現在、次の2つの方法で行っています。1つは細いチューブ内に胚を入れて、子宮口からあらかじめ計測していた子宮内へ入れる方法です。普通の内診と同じ体位で痛みもほとんど感じません。ほとんどはこの方法で行います。もう1つの方法は経子宮筋層子宮内移植法です。採卵の時と同じように超音波診断装置で子宮内を見ながら、針を子宮に穿して針先が子宮内膜に入った事を確認して、チューブ内に入れた胚を針先から注入します。麻酔は使いませんので一瞬の痛みは感じますが、すぐに終わります。スムーズに胚を子宮内に戻す事が最も大切です。どちらの方法をとるかは医師が判断します。
子宮に戻す胚の個数は、当日の胚、子宮の状態、それぞれの方の背景によって異なりますが、多胎妊娠を防ぐために原則2個以下に制限しています。胚移植の前に医師が説明しますので、胚移植数は御相談ください。
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(7)胚移植後の管理について
胚移植後1時間安静をとっていただき、異常がなければ帰宅できます。その後は通常の生活をする事が可能です。採卵後16日目頃に血液検査にて妊娠判定を行います。その間、卵の着床を助けるための内服薬や注射を行います。又、当院では注射のため毎日の通院が困難な方のために、海外で使用されているプロゲステロン膣座薬(ウトロゲスタン)を取寄せ、必要な方に使用し好成績をおさめています。プロゲステロン膣座薬(ウトロゲスタン)を使用した場合は、適時血液中のホルモン値を確認するために採血を行います。血液中のホルモン値をタイムリーに判断しプロゲステロン膣座薬(ウトロゲスタン)の使用量を変更したり、注射に変更したりする必要があります。そのため採血後1時間から2時間程度お待ちいただくことがあります。
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