顕微授精

顕微授精について

体外受精をしても、精子の数が少ない人や運動率の悪い人は受精をしない場合が多く、また精子は正常と考えられていた方でも25%の方は受精が成立しません。その原因は卵を保護している透明帯という殻を精子が突き破って卵の中へ侵入できないという精子側に問題がある場合と、卵側の質の問題で精子が良くても受精しにくいという場合があります(原因不明受精障害)。

そこで顕微鏡と特別な装置を使い、卵細胞質内精子注入法(ICSI)で受精を試みます。これは、1個の精子を細いピペットに吸い込んでおき、卵細胞の中に直接ピペットを穿して1個の精子を卵細胞内に注入する方法です。

顕微授精の様子
顕微授精の様子
無精子症患者の精巣内精子
無精子症患者の精巣内精子

卵細胞内に直接注入するため、受精は95%以上の人に期待できます。全く動いていない精子や、奇形の精子、また“無精子症”と診断された方でも精巣(睾丸)から精子が見つかれば、この方法で妊娠可能(2015年・当院の妊娠率30.3%)となり、元気な赤ちゃんが誕生しています。

このようにICSIによって男性不妊症のほとんどが解決されました。当クリニックに於いて、顕微授精によって生まれた赤ちゃんの数は1,500名を超えています。

又、現在まで、顕微授精により妊娠に成功し、生まれた赤ちゃんの異常発生率は、世界中の様々な施設で追跡調査されていますが、もともと父親の遺伝子に問題があって精子所見が異常である場合には、同じ遺伝子的問題を受け継ぐ可能性があります。しかし、顕微授精手技そのものによって異常な赤ちゃんが生まれる確率が高くなるとは考えられていません。体外受精や自然妊娠により生まれた赤ちゃんの異常発生率と、ほとんど変わらないと報告されています。