学会発表・論文発表

2018年 第63回日本生殖医学会(2018.9.6-7 旭川)

第一分割時の異常はその後の胚発生を予測する指標となるか

大阪New ART クリニック

New ART リサーチセンター

細川 由起松葉 純子森本 有香原武 佑樹富山 達大
  • 目的

    タイムラプス観察によって特定可能な、分割の速度や同期性、異常分割の有無は胚の発生能や着床能の予測、異数性胚の検出に有用な指標であると指摘する報告は多い。しかし当院では症例によって分割胚移植を実施しており、早期に特定可能な指標を必要としている。そこで我々は第一分割時に観察される異常に着目し、胚発生能の予測に有用であるか検討した。

  • 方法

    2017年12月から2018年2月の期間に当院にてIVFまたはICSIを実施し得られた2PN胚426個をEmbryoScope+(Vitrolife)にて培養し、得た画像をEmbryoViewer(Vitrolife)にて分析した。分割前後に観察された細胞質の変形、1cellから3cell以上への分割、第一分割後続けて分割が起こった胚を異常群、以上にあてはまらない胚を正常群として、当院の胚凍結基準であるDay4以降に胞胚腔形成したCompaction胚(以下Comp cv胚)への到達率、胚の発生速度を比較した。

  • 結果

    対象胚のうち48.8%(208/426)が異常群で、患者年齢、不妊原因、卵巣刺激方法、採卵数、受精方法に有意差はなかった。Comp cv胚到達率は異常群46.3%(81/175)となり正常群79.2%(145/183)と比べて有意に低くなった(p<0.001)。前核消失から6cellまでの平均到達時間に有意差が見られた(正常群29.54 vs.異常群25.51、p<0.01)。

  • 結論

    第一分割時に異常が観察された胚のComp cv胚到達率は正常胚と比べて有意に低く、異常胚の特徴として第二分割以降も正常胚と異なる速度で発生が進むことが分かった。従って分割胚移植時は第一分割異常の有無を移植胚選択の指標の一つとして考慮するべきであると考える。