学会発表・論文発表

第62回日本生殖医学会(2017.11.16-17 下関)

体外受精を施行し帝王切開出産に至った患者の、帝王切開適応理由についての検討

大阪New ART クリニック

New ART リサーチセンター

細川 由起松葉 純子森本 有香原武 佑樹松原 健一安部 珠実仲谷 和子富山 達大
  • 目的

    昨年の本大会において我々は新鮮または凍結胚移植によって出生した児の11年間分のデータから、凍結胚移植によって出生した児は新鮮胚移植と比べて平均出生体重が有意に重く、帝王切開率が有意に高いことを報告した。そこで今回我々は平均出生体重の増加が帝王切開率上昇の原因であると仮説を立て、患者または出産施設から入手した情報を元に、新鮮または凍結胚移植後に帝王切開出産に至った患者の帝王切開適応理由を分析したので報告する。

  • 方法

    帝王切開出産に関する情報を入手することができた、2011年1月から2016年6月の期間に当院にて胚移植を行ない単胎出産に至った、新鮮胚移植54周期、凍結胚移植123周期を対象とした。出産に関する情報は患者へのアンケートまたは出産施設からの提供により入手し、出生体重、出産週数、帝王切開の適応理由を分析した。

  • 結果

    新鮮胚移植群および凍結胚移植群の母親の平均年齢は37.2歳vs.36.5歳、平均出生体重は2747.3g vs.3036.3g(p<0.01)、平均出産週数は37.7週 vs.38.3週であった。帝王切開の適応理由の分析では、各群において最も多かった理由は新鮮胚移植群では胎児機能不全14.8%、凍結胚移植群では既往手術24.4%となった。平均出生体重増加との関連が考えられた児頭骨盤不均衡は新鮮胚移植群3.7%、凍結胚移植群4.1%となり有意差はなかった。

  • 結論

    本検討の結果、凍結胚移植によって出生した児の平均出生体重は新鮮胚移植と比べて有意に重く、昨年の我々の検討と矛盾しない結果となった。しかし帝王切開適応の理由の分析では、平均出生体重増加との関連が考えられた児頭骨盤不均衡の適応率は新鮮胚移植と凍結胚移植で有意差が見られなかったことから、提供された情報を元にした今回の分析方法では凍結胚移植と帝王切開率上昇の関係を明らかにすることはできなかった。