第61回日本生殖医学会(2016.11.3-4 東京)
新鮮および凍結胚移植によって出生した児の予後の比較及び推移に関する検討
大阪New ART クリニック
New ART リサーチセンター
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目的
近年我が国を含め各国から、新鮮胚移植により出生した児は凍結胚移植によって出生した児よりも出生体重が軽く、早産率や低出生体重児出産率が高いことが報告されている。今回我々は当院において新鮮胚移植または凍結胚移植を行ない出生した児の予後とその推移を比較検討した。
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方法
2004年から2014年の間に当院にて新鮮または凍結胚移植を行ない、単胎出産に至った初産800症例を対象とした。胚移植を実施した年ごとに出生体重、出生週数、早産率(37週未満)、低出生体重児出産率(2500g未満)、帝王切開率を分析し、新鮮胚移植と凍結胚移植において比較した。
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結果
検討期間内における新鮮胚移植および凍結胚移植群の比較では、平均出生体重2966.2g vs.3050.4g(p<0.01)、出生週数38.8週vs.39.1週(p<0.05)、早産率8.3% vs.7.3%、低出生体重児率13.7% vs.8.7%(p<0.05)、帝王切開率30.2% vs.7.3%(p<0.01)となり、出生体重、出生週数、低出生体重児出産率、帝王切開率において両群に有意な差が見られた。胚移植を実施した年ごとの分析では出生体重、早産率、低出生体重児出産率において両群に有意な差が見られた年はなかったが、出生週数は2004年のみ凍結胚移植群が有意に長くなった(p<0.05)。帝王切開率は2012年のみ凍結胚移植群が有意に高く(p<0.05)、その他の年においても凍結胚移植群の帝王切開率は新鮮胚移植群を上回る傾向が見られた。
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結論
本検討の結果、出生体重、出生週数、低出生体重児出産率において新鮮胚移植群と凍結胚移植群で有意な差がみられ、先行研究と矛盾しない結果となった。さらに凍結胚移植群は新鮮胚移植群と比べて帝王切開率が常に高い傾向にあることが明らかとなった。帝王切開適応の理由を調査し、凍結胚移植との関連について更なる詳細検討が必要であると考えられた。