学会発表・論文発表

日本生殖医学会(2014.12.4-5 東京)

当院におけるTESE-ICSIの精子選択基準の検討

大阪New ART クリニック

New ART リサーチセンター

松葉 純子横田 麻里子炭谷 美保細川 由起森本 有香大原 知子原武 祐樹得丸 倭佳富山 達大
  • 目的

    我々はICSIを行なう場合、形態と運動性がより良好な精子を選別している。しかし生存精子数が極めて少ないTESE症例では良好精子を選別できない場合がある。そこで今回我々はTESE症例において、精子の運動性による受精率、胚盤胞到達率、妊娠率の違いと、形態による受精率の違いについて後方視的に検討した。

  • 方法

    2009年から2014年5月の期間、当院にてTESEを行なった閉塞性無精子症患者29症例47周期を対象とした。ICSIを行なった精子の運動性を、わずかに尾部運動がある精子(微動群)と前進精子(前進群)の2群に分類し、受精率、胚盤胞到達率、妊娠率を比較した。また前進精子に関しては正常形態、幼若、頸部異常(太いもしくは屈折)、頭部形態異常(大きい、小さい、丸いなど)の4群に分類し、正常形態群と受精率を比較した。

  • 結果

    前進群の受精率は71.0%(110/155)であり、微動群の57.1%(136/238)と比べて有意に上昇した(p<0.01)。前進群、微動群の胚盤胞到達率、妊娠率はそれぞれ48.8%(42/86) vs. 53.8%(64/119)、25.0%(3/12) vs. 33.3%(8/24)であった(n. s.)。また精子の形態別受精率は正常形態群81.3%(39/48)、幼若群62.8%(27/43)、頸部異常群20.0%(1/5)、頭部形態異常群60.0%(3/5)であり、幼若精子と頸部異常精子をICSIした際に正常形態精子と比べて有意に低い受精率を示した(p<0.05)。

  • 結論

    前進精子で有意に高い受精率が示されたことより、TESE症例においても精子の運動性がより良好な精子を選抜するのがよいと考えられた。しかし胚盤胞到達率と妊娠率には有意な差は見られなかった。また、精子形態では受精率が有意に低い形態精子が存在することより、精子選抜をより詳細に行なう必要があると考えられた。