日本生殖医学会(2013.11.15-16 神戸)
精液調整及び前培養に用いる遠心管の材質は精子の運動性に影響を与える
大阪New ART クリニック
New ART リサーチセンター
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目的
当院ではポリブタジェンスチレン(PBS)製の遠心管を精液調整に用いていたが、メーカーの製造中止に伴いポリプロピレン(PP)製に変更した。しかし遠心管変更後にIVFを施行した患者の内、数名において前周期よりも著しい受精率の低下が見られた。今回我々は遠心管の材質が精子に与える影響について検討した。
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方法
IVF施行後の不要洗浄精子をポリスチレン(PS)製及び3種類のPP製チューブA、B、Cに分注しCO2インキュベーター内で一晩培養した。培養前に対する培養後の相対的運動率を算出し、培養前後で比較した。またPBS製の遠心管で精液を調整した2012年2月~3月採卵の41周期(PBS群)と、PP製の遠心管を用いた2013年2月~3月採卵の41周期(PP群)のIVF及びSplit ICSIの成績を比較した。
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結果
相対的前進運動率はPS製チューブ95.8%、PP製チューブA、B、Cが54.8%、27.0%、68.9%となり、PP製チューブBで有意な低下が見られた(p<0.01)。相対的運動率に関してもPS製チューブ83.5%、PP製チューブA 60.3%に対し、PP製チューブB、Cでは40.5%、58.3%となり培養前よりも有意に低下していた(p<0.01)。さらにPBS群のIVF受精率、Split ICSI受精率は76.8%、83.1%であったが、PP群では60.0%、67.8%となりIVF受精率が有意に低い結果となった(p<0.05)。
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結論
PP製チューブで前培養した精子は運動性が低下し、IVFの受精率低下につながる可能性が示された。精液調整において遠心処理は避けられないが、大半の遠心管が強度の強いPP製である。従って最終調整した精子をPS製のチューブで前培養することで精子への影響を軽減できると考えられる。