学会発表・論文発表

日本生殖医学会(2010.11.11-12 徳島)

精子凍結融解後の処理方法と精子DNA fragmentationに関する検討

大阪New ART クリニック

New ART リサーチセンター

炭谷 美保福富 紀子松葉 純子小泉 あずさ横田 麻里子橋口 綾乃日貝 千春佐藤 暁子細川 由起富山 達大
  • 目的

    精子凍結は現在のARTにとって欠かせない技術であるが、凍結処理は精子DNAに損傷をあたえることが知られている。我々はより有効な凍結後の精子選別方法を選択することを目的とし、凍結後の処理方法と精子のDNA fragmentationの割合(DF率)について検討した。

  • 方法

    不妊男性患者13症例を対象とした。精液は液化後90%・50%Isolate2層の密度勾配遠心法により回収し((1)凍結前精子)、その後凍結保護剤と混和して液体窒素蒸気法によって凍結し室温にて融解した((2)凍結融解精子)。凍結融解精子は再び90%・50%Isolate2層の密度勾配遠心法により回収し((3)凍結2Layer精子)、引き続きswim-up処理を行った((4)凍結2Layer+swim-up精子)。以上4群における精子のDF率を算出した。DF率はSperm chromatin dispersion test kit (Halosperm®, halotech dna)を用いて調べた。

  • 結果

    (1)と(2)の平均DF率は8.3%、13.6%であり、全症例で凍結後のDF率が増加した。凍結融解精子の処理後では(3)14.5%、(4)9.2%であり、(3)(4)の処理群を(2)と比較したところ、(3)では7症例(53.8%)、(4)では12症例(92.3%)のDF率が減少し、有意な差が認められた。凍結前の精子群(1)と凍結融解精子の各処理群(3)(4)のDF率を比較したところ、(1)と(3)では有意な差を認めたが、(1)と(4)では有意な差が認められなかった。

  • 結論

    凍結によってDNA fragmentationを起こした精子は、密度勾配遠心法のみで処理するのではなく、swim-up処理も続けて行うことで、より凍結前の状態に近づけることができることが示唆された。