日本生殖医学会(神戸)
卵丘細胞との共培養による胚発育率の改善
大阪New ART クリニック
New ART リサーチセンター
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目的
様々な培養液の開発により、体外での受精率や分割率、胚盤胞発育率は飛躍的に上昇した。しかしそれらの胚を移植した際の妊娠率や着床率には受精や発生ほどの上昇はみられない。これは採卵により体外に出され、移植により再び体内に戻されるという劇的な環境の変化によるものと考えられる。このような胚へのストレスを軽減するため、体外培養環境を体内環境に近づける工夫が行われてきた。その方法の一つとして顆粒膜細胞や卵管上皮細胞などの体内で卵子や胚と自然共培養がなされている細胞との共培養である。そこでIVF症例において、比較的容易に採取でき取り扱いが容易な卵丘細胞との共培養を行うことで、受精後の胚発育が改善されるのかを検討した。
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方法
IVF胚において受精後の卵丘細胞との共培養の効果を調べるため、2008年1月~5月までの期間でインフォーム・コンセントを得た後、8個以上採卵できた22症例を対象とし、同一症例で共培養群と通常培養を行ったコントロール群とに二分した。採卵後2~3時間の前培養の後、共培養群のみに卵丘細胞を 21G針でカットした後媒精を行った。受精確認後、共培養群では卵丘細胞と受精卵をDay3まで共培養を行い、コントロール群では共培養を行わなかった。その後初期分割率、Day3での発生率、Day5での胚盤胞到達率を両群で比較した。
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結果
卵丘細胞との共培養を行った群の受精率は65.2%(105/161)、コントロール群では63.7%(114/179)、多精子受精率は共培養群 4.3%(7/161)、コントロール群9.5%(17/179)で有意な差はみられなかった。しかしDay3における7細胞以上に発生した胚の割合、(54.7% v.s.38.3%、p<0.05)、Day5における胚盤胞到達率(63.8% v.s.35.2%、p<0.01)で共培養を行った群で有意に上昇した。
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結論
卵丘細胞との共培養がIVF胚の発生に有効であると考えられた。今後は共培養によって妊娠率や着床率が改善されるのかを検討したい。