学会発表・論文発表

哺乳動物卵子学会(東京)

当院における胚凍結の工夫

大阪New ART クリニック

New ART リサーチセンター

小泉 あずさ福富 紀子宮田 広敏松葉 純子横田 麻里子富山 達大
  • 目的

    当院では、培養5日目あるいは6日目にCryoloopを用いて胚盤胞のガラス化凍結保存を行なってきた。しかし、中には良好胚盤胞でありながら融解時に変性してしまう胚が認められた。これは凍結時の胞胚腔が拡がりすぎたために脱水が不十分となり、変性したものと考えられた。そこで、生存率を上昇させるために胞胚腔が拡がりきる前の培養4日目に胚の状態を確認し、凍結する(以下、Day4凍結と略す)ことによって生存率を上昇させることができるかどうかを検討した。また、胞胚腔の広がりきった胚ではLaserを用いて胞胚腔を収縮(以下、Laser puncture法と略す)させたのち、凍結に用いることにより生存率を上昇させることができるかどうかを検討した。

  • 対象

    2002年1月から2005年12月までの間にインフォームドコンセントを行い、Cryoloopを用いて胚盤胞のガラス化凍結保存を行なった569周期。

  • 方法

    凍結は、7.5%EG+7.5%DMSO(平衡化液)に2分間平衡後、 15%EG+15%DMSO+Sucrose+Ficoll(ガラス化液)に浸し、Cryoroopを用いて30秒以内に液体窒素に投入し凍結した。融解は胚盤胞を0.33M Sucrose2分、0.2M Sucrose3分の順に浸して行った。培養後、倒立顕微鏡下で胚グレードの確認を行い、胚全体が褐色なものを変性とした。胚グレードはGardnerの分類に従った。Laser punctureは、胞胚腔の拡がった胚盤胞に対して、透明帯にLaserを照射し、開孔することによって胞胚腔を一時的に縮小させた後、凍結を行った。

  • 考察

    拡張胚盤胞の生存率を高めるには、拡張した胚盤胞に見合った平衡化を行なう必要があり、その方法としてガラス化液の平衡時間の延長が考えられるが、細胞毒性が高くなる可能性がある。そこで、胞胚腔が拡張する前の培養4日目に評価を行い、凍結を行ったところ、有意に生存率を上昇させることができた。また、胞胚腔が拡がりきってしまった胚盤胞を凍結する場合、Laserによる透明帯開孔後、凍結を行うことによって生存率を上昇させることができた。このように、胚の成長に合わせた方法を選択する必要があると考えられた。