日本受精着床学会(岐阜)
超急速ガラス化法により保存された胚盤胞の融解時にAssisted Hatching法(AHA)を加え着床率の改善を試みた臨床成績(富山達大)
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目的
我々は極少量の耐凍剤とCryoloopを用いた超急速ガラス化法で世界に先駆け妊娠出産例を報告し本学会でも報告してきた。今回は融解直後の胚盤胞にAHAを加え、さらに着床率の改善を得たので報告する。
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方法
HART3施設において胚盤胞移植後、ガラス化保存可能な余剰胚盤胞が有り、患者同意の得られた周期に超急速ガラス化法を行い、融解直後にAHAを加え移植した群の臨床成績を行わなかった群と比較検討した。手順はEthylene GlycolとDMSOが共に7.5%(平衝化液、2min)、15%(ガラス化液、30sec)に0.65M SucroseとFicollを加えたガラスを加えたガラス化液に胚盤胞を浸した後、Cryoloopに極少量のガラス化液と共に余剰胚盤胞を載せ、直ちに液体窒素に浸す、超急速冷却を行った。融解は37℃、0.33M sucrose液に直接ループ部分を浸し、急速融解し、融解直後(10分以内)にAHAを酸性タイロード液(pH2.3)で行った。胚移植は外因性ホルモン剤投与による子宮内膜作成周期に、融解後再拡大の見られた生存胚盤胞を融解当日に移植し、胎嚢(GS)が確認できた症例のみ妊娠と判定した。
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成績
AHA法を加えた群126周期(249個移植)では56周期の妊娠(44.4%/BT)、81個の着床(32.5%)が見られ、AHA(-)の群では119周期(260個移植)に46周期の妊娠(38.7%)55個の着床(21.2%)となり、AHA(+)の群が統計学的に有意に良い成績となった。(p<0.01)
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結論
透明帯は凍結融解により硬化するためAHAを加えることで着床を改善できる点は既に報告されている。また新鮮胚盤胞ではAHA施行は、外細胞層が透明帯に接着しているため技術的に困難であるが、融解直後の胚盤胞は胞胚腔が萎縮した状態のため囲卵腔がありAHAが行いやすく、本研究に示すような有意な臨床成績の改善が見られた。