日本受精着床学会(岐阜)
超急速ガラス化法(Ultra-rapid Vitrification:Cryoloop法)を用いた 胚盤胞ガラス化保存の臨床成績(II)(富山達大)
広島HARTクリニック
大阪HARTクリニック
東京HARTクリニック
-
目的
胚盤胞移植法は多胎防止や反復ART不成功例の妊娠率向上及び診断に有効であるとの報告が多いが、さらに高い臨床成績を得るために余剰胚盤胞を有効に保存し使用する重要性が高くなっている。我々は極少量の耐凍剤とCryoloopを用いた超急速ガラス化法で、世界に先駆け妊娠出産例を昨年報告した。今回は 188周期の臨床成績を報告する。
-
方法
上記3施設において胚盤胞移植後、ガラス化保存可能な余剰胚盤胞が有り、Consentを得られた188周期にCryoloopを用いた超急速ガラス化法を行った。手順はEthylene GlycolとDMSOがそれぞれ7.5%(平衝化液、2min.)、15%(ガラス化液、30sec.)に0.65 M SucroseとFicollを加えたガラス化液に胚盤胞を浸した後(37℃)、ナイロンループ(太さ20μm、直径0.5~0.7mm)にて構成された Cryoloopに、極少量のガラス化液と共に余剰胚盤胞を載せ、直ちに液体窒素に浸す、超急速冷却を行った。融解は37℃、0.33 M sucrose液に直接ループ部分を浸し、急速融解した。胚移植は外因性ホルモン剤投与による子宮内膜作成周期に、融解後再拡大の見られた生存胚盤胞を融解当日に移植し、心拍確認ができた症例のみ妊娠と判定した。
-
成績
188周期において623個の胚盤胞を融解し、506個が生存し(81.2%)、176周期に移植が可能(移植キャンセル率6.4%)で64周期に妊娠が確認され(36.4% BT),17例の出産で21児が得られた(平成14年5月現在)。ガラス化保存日が採卵後5日目では50/118周期に、6日目では14/58周期に妊娠が認められ、生存率もそれぞれ91%、67%と5日目が有意に良い結果となった。(p<0.05)。
-
結論
今回の報告は複数の施設で類似の臨床成績を得ることが出来、継続的に高い妊娠率と健児を得ているより、臨床的に確立していることを示している。臨床的には採卵後5日目の胚盤胞の方が胚盤胞到達の速さと肺胞腔拡大の程度の違いからガラス化融解後の生存率が良い事も示された。