日本受精着床学会(岡崎)
Cryoloopを用いたVitrification法の検討(富山達大)
広島HARTクリニック
大阪HARTクリニック
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目的
我々は従来のSlow cooling法に比べ、短時間で簡便に施行できる独自のVitrification法による妊娠、出産例を報告してきた。今回は高濃度の凍結保護剤を用いるために起こり得るChemical damageを軽減し、かつ脱ガラス化によるMechanical damageも防ぎ得る方法として、Cryoloop 1)を用い極少量の凍結液にてガラス化するVitrification法を試み知見を得たので報告する。
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方法
胚の凍結には患者よりConsentを得られた余剰胚を用いた。4~8分割の初期胚の場合20%および40%のethylene glycol(EG)を細胞透過性耐凍剤とし、それに30%Ficoll、0.5Msucroseを加えた凍結保護液であるEFS20に2分浸して平衡化しEFS40に1分(37℃)浸した後、ナイロンループ(太さ20μm、直径0.5~0.7mm)にて構成されたCryoloopに凍結胚を載せ、液体窒素に直接浸す極少量、超急速凍結を行なった。解凍は37℃、0.25Msucrose液に直接ループ部分を浸し超急速解凍した。未受精卵および胚盤胞は、 Ethylrne GlycolとDMCOがそれぞれ10%(平衡化液,2min.)、20%(ガラス化液,30sec.)に0.65M Sucroseを加えた凍結保護液とCryoloopを用いた。
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結果
未受精卵では9個中8個が形態学的に生存し、ICSIにより5個が受精し2個の胚発達(40%)が見られた。初期胚においては21個中16個(76.2%)に、胚盤胞においては21個中12個(57.1%)に形態学的生存および胚発達(Hatchingを含む)が見られた。8分割胚を解凍後翌日移植した症例と、解凍後再拡大の見られた胚盤胞を移植した2例が妊娠継続中である。
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考察
Cryoloopを用いることで従来のストローと比べさらに簡便で極めて少ないガラス化液で超急速に凍結することが可能となった。解凍後胚移植により妊娠継続中であることから、その臨床的有用性を示した。
1)Lane M.,Schoolcraft WB., Gardner DK., Fertil, Steril、1999;62;1073.