日本受精着床学会(熊本)
原因不明受精障害例に対するRecombinant FSH(r-FSH)の使用経験(富山達大)
広島HARTクリニック
大阪HARTクリニック
ローズレディースクリニック等々力
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目的
ICSIを行っても受精率の低い原因不明の受精障害の症例では、卵の質に原因があることが少なくない。卵の質の改善を目的に、欧米では既に主流になっているr-FSHを使用して、その効果を検討した。
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方法
我々が過去3回以上ICSIを行っても採卵あたりの受精率が30%未満で、この治療法を希望した7名を対象とした。平均年齢は33.8歳で(33-37)で、平均ICSI回数は4.3回(3-6)であった。全例long法でdown-regulationを行い、生理3日目より自己購入したr- FSH225Uを開始、8日目より卵胞計測、E2測定を行い、最大卵胞径が18mmに達したらHCG10,000単位投与、36時間後に採卵、ICSIを行い、翌日受精の確認を行い、症例によって3日目にAHA後の胚移植か、あるいは5-6日目に胚盤移植を行った。
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結果
従来HMG法との比較をした表を下記に示す。
平均採卵数 平均MII数 平均受精卵
(MII当り)分割率 平均胚移植数 HMG 13.9 6.3 38.8% 63.4% 1.7 r-FSH 15.0 9.1 57.8% 86.5%% 3.8% p<0.05
この結果1名の妊娠が認められた。総投与量は周期当りHMGで平均1725単位、r-FSHで1800単位と差は認められなかった。また副作用も軽度OHSSが1例あったのみで、HMG投与と同様であった。また6名が投与時の疼痛がHMGと比べ著しく減少したと述べた。
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考察
r-FSHの利点は、その純粋性による品質の均一性、大量生産が可能となったためで、従来のHMG剤と比べても効能、副作用の点で差はないと報告されている。凍結解凍胚移植では、r-FSH使用例のほうが有意に妊娠率が高かったという報告もあり、今回は卵の質の向上を目的として使用を試みた。症例は少ないものの有意にMII卵数、受精率、胚移植数は向上したので、今後症例を増やして成績を発表する。