学会発表・論文発表

日本受精着床学会(熊本)

New Sequential Mediumを用いてのBlastocyst胚移植(富山達大)

広島HARTクリニック

大阪HARTクリニック

ローズレディースクリニック等々力

向田 哲規高橋 克彦中村 早苗松原 朋子富山 達大和田 滋子岡 親弘
  • 目的

    反復ART不成功例に対して胚盤胞・胚移植(BT)が有効であることは、昨年の本学会で報告したが、その際は自家製のa-MEMにSynthetic Serum Substitute or HSAを加えた培養液をDay3よりの後期培養として使用していた。今回は培養システムの改善の為Gardnerらにより考案されたSequential Mediumを用いBTを施行し、有益な知見を得たので報告する。

  • 方法

    98年8月~99年2月の期間、過去に3回以上胚移植を行っても妊娠に至らなかった118名の患者に施行した合計188周期のIVF、ICSI、凍結胚移植を対象とした。受精を確認後SI or G1.2(Scandinavian IVF Science・Gothenburg・Sweden)にて48時間培養し、その後S2 or G2.2に移し、さらに48時間から最大96時間目まで培養し、胞胚腔形成および明確な内細胞塊の認められる胚盤胞を移植した(平均胚移植数2.7個)。凍結胚移植はエストロゲン製剤投与による子宮内膜作成周期で行った。

  • 結果

    104周期でBTが可能であった(キャンセル率21.8%)。31周期で妊娠が確認でき(妊娠率BT当り29.8%)、22名がongoing、8名が流産、1名が子宮外妊娠であった。培養システムの改善により胚盤胞迄達した周期が78%と向上した(前回66%)。妊娠率は40才以上の高齢者で有意に低く(p<0.05)、また反応不良例(採卵数<5個)でも低かった(p<0.05)。

  • 考察

    BT法によって患者当たり26.3%が妊娠したことは、反復ART不成功例に対して、BT法は従来法より有効な治療法であると考えられた。BTでの妊娠例は、初期胚が子宮内で胚盤胞にまで成育できない事を示唆し、胚盤胞にまで達しなかった症例では胚の質に問題がある可能性が推定され、BTにて妊娠しなかった症例は子宮内の着床条件に問題があるなど、その後の治療方針決定に重要な情報が得られる有用性も認められた。G1.2,G2.2のような市販の培養システムによって高率に胚盤胞に達することは今後より多くの施設においてBT実施可能になると考えられる。